書評「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか」中島聡

 Windows95Internet Explorerの開発に携わり、ダブルクリック中嶋聡著の「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか」を読んだ。タイトルは何度となく目にしていたので結構話題になった本だったかと思うのだが、一月ほど前にKindle Unlimitedで見つけて経歴も相まって気になったのがきっかけで読むことにした。

 

 よくある意識の高い仕事術に関する本ではあるが、前半は著者の高校時代に始まり、アスキー・NTT・マイクロソフトと生きてきた人生を振り返る自伝的要素を強い。今まで人生をどう進めて現在に至っているか、そして仕事が終わらないとはどういうことか(=締め切りを守れないからだ。)という前半の土台をベースに後半著者が提唱するのが「ロケットスタート時間術」というものである。

 

これは仕事とは一発目で完璧に終わることは無いという前提のもとに、全体の作業8割を作業日数の2割で進めて、後半余裕を持ってブラッシュアップしたりする時間にすることで確実に仕事を締め切りまでに終わらせるというものである。

 

 この手法が割と上手くやれるやり方だというのは経験則として理解できるものがある。しかしこれは同じIT業界にいるからかもしれない。プログラミングというのは全体の設計図ができていれば(できていないとそもそもコーディングできないのだが)、割と短時間である程度の完成度までは持っていくことができ、ある程度の形まで持っていくのは容易い。一方でバグがなく、きれいなプログラミングを書くのはある意味果てしない時間を要するものであり、凝り始めると無限に時間がかかりがちである。そうした意味で多くのIT技術者は無意識的にしろ同じ手法で作業している方が多いのでは無いかと思った。

 

 この書籍の内容は結局上に書いた太字に尽きる。文章からも読ませるものがあるし、勉強を目的にするなといった考え方も多いに共感できるものでこの手の本として、個人的には結構おすすめできる一冊だと思う。