映画 ジョゼと虎と魚たち 感想

珍しくアニメ映画を公開初日に観た。タイトルは、「ジョゼと虎と魚たち」という。この作品は田辺聖子氏による小説を原作としているということだが、原作を私は読んでいないし、過去のメディアミックスにも触れていない。よく言えば先入観なくとも言えるが、そのあたりを踏まえた上での感想として読んでいただければと思う。

 

物語としては、車椅子の少女ジョゼが海への憧れと目標を持つ大学生の恒夫と知り合い、ひきこもりで外の世界を猛獣の溢れる世界から外の世界をしり、そして恒夫との関係性・世界との関わりを変えていくというありきたりと言えばありきたりな印象がある。しかし全体としてみれば綺麗にまとめてあり、観終わった後によかったなと思える映画なのは間違いない。作画や演出・演技も安定しており、クリスマス公開ということで男女で観にいくにも良い映画であろう。

 

ただいくつか気になった点もある。

二つあり、一つ目は、全体として綺麗にまとめるということに拘りすぎて大切なテーマが薄れてしまっているのでは無いかという点である。言ってしまえばジョゼと祖母が何故外の世界を恐れていたのかという点がぼんやりとしてしまっているというところである。これはググったところ原作ではしっかり背景がある様なのでアニメ化の脚本において削られたのだろう。調べた感じあまり心地の良い設定ではないのかもしれない。しかし、ひきこもりであるジョゼという女の子を中心に据えた以上、それに動機を与えないというのは彼女をただのひきこもりにしてしまっており、祖母もなんだかよく分からないけど孫を家に閉じ込めている人である。これでは作品として視聴者に与えるべき情報が不本意な形で歪んでしまうのでは無いかと思う。

 

もう一つは、冒頭とラストの車椅子が坂道から滑るシーンである。作品としてあまり動きが無いことによる動きのあるシーン欲しさや恒夫がジョゼを救うというわかりやすいシチュエーション・同じ展開を2回やることで対比させる等の意図があるのだろうとは思うのだが、命に関わるようなことを2回も使うのは正直飛び道具として使っていないか?と思ってしまうことやジョゼがひとりでも歩いて行こうと決意の後のシーンであることを踏まえると正直ラストにはいらなかったのではと思ってしまう。

 

聲の形」をはじめ障害者をテーマにした作品において、障害者の描き方はこうあるべきだみたいな意見は好きでは無いので差し控えるが、気になった二点はいずれもジョゼというキャラクターの行動と成長を描きつつ、映画の都合の為にそういうふうにキャラを捻じ曲げているのではという風にも取れてしまう。気持ちよく観れた映画だからこそ、そんなことが気になってしまった。